SPring-8/SACLA Research Frontiers 2025では、2024年および2025年にSPring-8およびSACLAで達成された傑出した科学的成果を紹介しており、SPring-8とSACLAを利用して、毎年1,000本以上の論文が発表されています。SPring-8/SACLA Research Frontiers 2025の編集委員会は、優れた科学的成果として44編の論文と2編の総説を選定しましたが、その中に鈴木宏輔准教授・櫻井浩教授の研究が含まれました。本研究は理工学府博士前期2年電子情報・数理プログラムの所属の中村一貴君の修士学位論文であり、出光興産株式会社・宇都野太博士、高輝度光科学研究センター辻成希博士らとの共同研究です。
全固体電池では、液体を利用した電池に比べてLiイオン伝導度が低いため、空間的に不均一な充放電反応が生じやすいことが課題となっています。そのため、実電池に近い電池での、充放電動作中のLiイオン濃度の空間分布を測定する手法の開発が求められています。しかし、全固体電池は材料中のLiイオン濃度が高いため、充放電反応時のLiイオン変化量が小さく、高精度でLiイオン濃度を求める必要があります。鈴木宏輔准教授らは高い物質透過能を有する高エネルギー放射光X線を用いたコンプトン散乱X線のスペクトル形状のラインシェイプパターンの解析から、SUS製ケースに収納したコイン型電池の充放電時における正極及び負極内のLiイオン濃度の空間分布を精密に測定することに初めて成功しました。今回開発した手法は、実電池に近い全固体電池内のLiイオン空間分布を測定する手法として全固体電池の開発においてとても有用な手段となると期待され、2024年11月25日発行のApplied Physics Letters誌に掲載された論文(Kazuki Nakamura, Kosuke Suzuki, Futoshi Utsuno, Kodai Takano, Tomoya Ando, Kazushi Hoshi, Naruki Tsuji, Hiroshi Sakurai, Operando Li-ion distribution measurement of all-solid-state batteries by Compton-Scattered X-Rays, Appl. Phys. Lett. 125, 223902 (2024))がEditor’s Pickにも選出されました。
関連リンク
- SPring-8/SACLA Research Frontiers 2025: https://publications.jasri.jp/research_frontiers/ja/rf25/
- 櫻井浩 教授の研究紹介はこちら
- 鈴木宏輔 准教授の研究紹介はこちら
- 医理工レギュラトリーサイエンス学環HPはこちら

