様々な分野に役立つ環境流体力学
マイクロバブルと呼ばれる小さな気泡の力
2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、木陰とミストで快適な空間をつくる実験中(2015年夏、東京ビッグサイト)
小さな気泡をたくさん含んだ水を使って、洗剤を使わずに油や汚れを落とすことができます。洗剤を使わないでも油が落ちれば、地球環境に優しい洗浄ができます。小さな気泡が油を落とすメカニズムを研究しています。
ミスト噴霧で涼しい空間をつくる
小さな液滴のミストを使って、真夏でも涼しく快適な室外空間をつくる研究をしています。熱中症対策にも重要な技術です。
半導体ウェーハの洗浄
携帯電話やコンピュータの中で使われている集積回路をつくるとき、半導体ウェーハの表面を何十回も洗っていることをご存知ですか?ウェーハ上の細かい配線の中に小さなゴミが一つでもあると、回路がうまく動かないので、洗浄技術が大変重要です。こんな分野にも流れの研究が必要になります。
大学時代に得たこと
大学の時代にたくさんの友人に出会い、たくさんの本を読んで、たくさんの難しい問題も解きました。今思うとすべて自分のためになっていると感じます。
人とロボットの共存を目指して
人に優しい機械
開発中の磁気歯車
開発中の移動ロボット
技術の進歩により機械は人に身近なものとなってきています。ロボットにおいても工場では産業用ロボットが柵の中で人と隔離されて使用されていましたが、現在はある条件下で人と一緒に働く協働ロボットが許容されるように変わってきています。
また、介護・福祉・医療などを始めとして人の生活空間で動作するロボットも今後開発が進み普及していくと考えられます。そうするとますます大切になってくるのが人を傷つけない安全なロボットということになります。故障しないロボットはもちろんですが、なにかの弾みで人と接触してしまうことが起きないとも限りません。そのような場合にどのように人の安全を確保するかが重要になってきます。この技術が開発されないとロボットを安心して使用することができません。
その一端を担える技術として非接触で運動を伝達できるうえに伝達する力などを容易に制限できる磁気歯車などのデバイスや安全にものを運ぶことができる移動ロボットなどの開発を行っています。人に優しい機械の実現を目指した研究を行うことを心がけています。
小さな機械が創り出す大きな安心
テーラーメイド医療
最先端ナノテクノロジーによるバイオ・医療への応用が期待されています。多くの人が長く健康であることを願っていて、技術も着実に進歩しています。例えば、患者一人一人の状態を的確に判断・治療する、テーラーメイド医療がその一つです。
パソコンやスマートフォンの中にある電子回路を加工する方法によって、テーラーメイド医療向けの小さな機械(マイクロナノデバイス)を創る研究をしています。特定のガンであることを診断するためにDNA遺伝子を用いた検査が行われていますが、細胞の中のDNAは毛糸の玉状になっていて分析が困難な場合があります。マイクロナノデバイスを使うと、簡単にDNAを吊り橋状に伸ばしながら液中に浮かして分析することができ、従来よりも高速・高感度に診断できるようになってきました。
ワクワクする研究を
大学では、最先端技術を学ぶことができます。最先端技術そのものの研究はもちろん、最先端技術を他の分野に応用する研究もたくさんあります。それらの研究の中から、多くの人に役に立つ科学技術がこれからも生まれ続けます。その担い手の一人になることにワクワクしてきませんか。
機能性材料表面・界面の創製
材料表面・界面の制御
学生が製作した接合装置と接合試作品
私たちが日常生活で使う道具には、自動車のエンジンからタイヤに動力伝達する際に用いられる大きなギヤ表面や、スマートフォン内部の小さな電子部品を基板に接続する際の接合界面など、必ず表面・界面が存在しています。これらの表面・界面を材料に応じた方法で上手に制御することで、それらの製品をより長く使い続けることが可能になります。
身の回りの道具を長持ちさせる技術開発
私たちは、乗り物に搭載されているギヤやシャフトなどに用いられる鉄鋼材料や人工関節に使われる医療用材料に対して、非鉄元素を材料表面から拡散浸透させることで、錆びにくく削れにくい表面を創る研究を行っています。さらに、自動車やリニアモーターカーなどの軽量化を目的に、ステンレス鋼とアルミニウム合金の接合界面を環境にやさしいクエン酸や酢酸で還元することで、より低エネルギーで高い接続信頼性を有する接続部形成技術の開発も行っています。
“See1st-Plan-Do-See2nd”
大学時代に学んだことは、現状を把握し、計画を立て、実行するのみでなく、良くも悪くも得られた結果から次を模索する大切さです。
原子の動きをシミュレーションする
物理学と工学が融合するシミュレーション
ハードディスクドライブを想定したシミュレーション
コンピュータの性能向上により、かつては非常に高価なスーパーコンピュータが必要とされた複雑な計算がPCでも実施可能になり、現在ではシミュレーションが機械や電子機器の設計にも随分と利用されるようになっています。私たちは、従来は物理学の対象であった原子レベルでのシミュレーションを様々な工学上の現象に適用する研究を行っています。
自然現象の根本は原子の運動状態の変化
微視的には物質は原子の集合体であるとの観点から、私たちは物質中の原子の運動状態を図に示す様にシミュレーションしています。これにより、作動中の機械を構成する固体・液体・気体の微視的な状態やそれらの高速な変化が統合的に解析できます。最近の機械では高性能化を意図して内部要素の微小化が進んでいるので、実験だけでは解明できない問題が増えています。原子レベルでのシミュレーションはそのような問題に対する解答を与えるものです。
無駄な勉強はない
大学以外も含め、自分が勉強したことは全て、長い目でみると必ずどこかで人生や仕事の役に立っていると感じています。
センサネットワークにより痛みを感じる構造をつくる
生物の痛覚を構造に
送風用ジェットファンのスマート化試験
生物の痛覚を構造に構築するスマート構造について研究を行っています。痛覚は、痛みを感じさせることにより早めの対処を促し、体調のさらなる悪化や、危険な状態にさらされ続けることを防いでくれます。ビルや橋、工場などの施設に、同じような異常が生じた際に検査あるいは補修の必要性を自ら申告するシステムを構築すれば、検査のためのコストを削減するだけでなく、重大事故、大規模災害を予防する事が可能になります。様々な施設の老朽化が進む現在では、安心して暮らせる社会を持続するため、重要な課題となってきています。
人間にある膨大な痛点
人間の痛覚は、20~30万個もの痛点から構成されています。この巨大なシステムをそのまま構造に築き上げると、そのコスト・重量・空間は膨大になり、とてもそのまま作る事はできません。そのため、少ないセンサデータからできる限り広い範囲の状態を自動評価する手法、大量のデータ(ビックデータ)から特徴的なデータを自動的に抽出する手法に関して様々な研究を行っています。
見えない力で物を動かす
見えない力、磁気の力
超電導浮上している回転体
世の中には見えない力がたくさんあります。この中で工学的に多く応用されているのが電磁力です。代表的なものは入力されたエネルギーを機械的運動に変換する装置でアクチュエータと言われるものです。この他にも物を浮かせたり、物体内部に熱を発生させたりと磁気の力でいろいろなことが実現可能です。
電磁気を応用した様々な機器
一足跳躍ロボットの跳躍
この電磁気を応用した様々な機器の研究開発を実施しています。例えば、超電導体と磁石を使うと、まるで物体が空中に拘束されているように安定して浮かせる事が可能です。この事を応用すると回転抵抗がほとんど無くなるので、長時間回転し続けるような円板が出来ます。回転している円板には運動エネルギーが貯まっていますからこれを好きなときに取り出す事が可能になります。この様な「電力貯蔵フライホイール」に関する研究や、強力な磁石を組み合わせ、より強力な磁場を発生させる事でとても大きな磁力を作り出し、他の機械要素と組み合わせて筋肉の瞬発力を再現したリニアモータを研究して跳躍するロボットや走れるロボットの開発を行っています。
他にもありますが、このように幅の広い研究テーマを研究室の学生と一丸となって楽しく研究を行っております。
動かす
研究の相棒
制御が実現する倒れない振り子
小学生の頃に、「ロボットのすべて」という本に出会いました。本の中のロボットは、いずれも輝いて見え、このようなロボットを作ってみたいと思ったのが、ロボットとの出会いです。私にとってのロボットの面白さは、「ロボットの形」ではなく「動くところ」、いや「ロボットを動かす」ところです。
ロボットなどを自分の思った通りに「動かす」学問が、「制御」です。この制御なくして実現できなかったこと、自動車の追突を防止するシステム、宇宙ステーションとのドッキングなど、たくさん有ります。
この制御に魅せられて、「制御の理論」に関する研究を行ってきました。現在の私の興味は、「学習の理論」、「様々な部品や機器が壊れたとしも、安全に動かす安全制御の理論」、「不安を感じることなく使用できる車いす」等といった安全安心に関する研究、「重粒子線治療用のベッドの制御」などです。その先には、制御の力でお互いに過度な負担をかけることなく、自然・医療・人間が共存していく社会ができたらと考えています。
計測による、より良い社会の実現
光波干渉計
LMM実験装置
藤井研究室では、計測工学を応用した様々な技術開発に取り組んでいます。 第一の課題は、光波干渉計と浮上質量を利用した、力の超精密計測法として提案している浮上質量法(LMM)です。LMMを応用して、力センサの動的校正法・動的誤差補正法、超精密材料試験機、マイクロフォースの高精度測定法などを開発してきています。また、宇宙ステーションなどのマイクログラビティ環境化で動作する質量測定器、宇宙飛行士用の体質量測定器などの研究開発に取り組んでいます。 第二の課題は、安全・安心な地域社会の実現のための防犯カメラシステムとして提案しているe自警ネットワークの研究・開発及び啓発・普及活動です。本研究では、画像の暗号化保存により、プライバシー保護の徹底を可能とするシステムを提案・開発し、製品化もされています。さらに、最近、全世界の街路灯を必要のない時、すなわち、誰の目にも入っていない時に、光量ダウンする方法の研究・開発に着手しました。