光の性能を極限まで引き出したデバイスを創る
光信号を自由に制御する

フォトニック結晶
(中央の○の部分への光の強い閉じ込め作用を有する)
光通信や光情報処理など、光信号は最先端分野で幅広く利用されています。しかし、超広帯域・超高速・量子効果も応用可能といった性能の高さゆえに制御が難しく、そのポテンシャルを十分に引き出す技術はまだ確立されたとは言えません。その光信号を自由に制御し、ウェーハ上で高機能な光集積回路を作るのが私の研究テーマです。
複合分野の集大成
光デバイスは、その性能ごとに適した材料系が異なります。例えば、液晶から汎用性の高い光スイッチを、ポリマーからウェアラブルな光導波路型人体センサーを作ろうとしています。電子情報系の学科ですが、化学系の学問も必要に応じて取り入れています。
頭と手
研究者は頭で考えるだけではなく、手を使って実際に物を作り実証しなくてはならないということを学生時代の恩師から学びました。研究以外の仕事でも、現場の感覚を重視するということにつながる良い言葉だと思います。
超高速アルゴリズム
アルゴリズム

出版した国際会議の論文集
アルゴリズムとは問題を解く手順です。計算機プログラムの、おおまかな設計図もアルゴリズムです。解きたい問題が決まっても、その問題を解く手順、すなわちアルゴリズムには多数の候補があります。もし、良いアルゴリズムを選択すれば、問題が早く解けたり、使用するメモリの量が少しで良かったり、機能の拡張が容易であったりします。一方、良くないアルゴリズムを選択すると、問題を解くのに長い時間がかかったり、メモリ不足でストップしたり、解が間違っていたりします。良いアルゴリズムを選ぶと、計算にかかる時間が1万分の1になることもあります。計算機の処理能力は約2年で2倍のように年々向上していますが、扱うデータはこれ以上のスピードで大規模化しています。良いアルゴリズムを選択しないと、処理に膨大な時間がかかってしまいます。より高速な計算機システムが多くの分野で必要とされています。
そこで、私たちの研究室では、様々な問題を、少しだけのメモリを使って、高速に、簡単に解く、アルゴリズムの設計技術を開発しています。この技術を使って、世界最速のアルゴリズムを多数開発しています。
夢
大学時代の夢は、世界中の人々が使う何かを設計したい!です。実際に、卒業後、某社にて初期のレーザプリンタを多数設計しました。自分の設計した製品を見かけると感動しますよ。今の夢は、世界中で活躍する技術者(あなたです!)を育てたい!です。
コンピュータの裏にある離散数学
離散数学とは

数学の問題をコンピューターで解きたい

点を線で結んでできる図形がグラフ
私達の回りにあるコンピュータは、驚くほど高速に、そして正確に様々な計算をしてくれます。どんな計算も、そのためのプログラムを作る人がいます。プログラムを理解するために必要なことの一つに「離散数学」があります。離散数学は高校までに学ぶことはほとんどなく、コンピュータを専門に学ぶ大学へ行かないと出合えない数学です。
私は離散数学の一つのグラフ理論を主に研究しています。たくさんの点とその間を結ぶ線で作られる図形をグラフと呼び、その性質について研究する数学がグラフ理論です。道路や路線図や地図などに現れる様々な「つながり」は、グラフで表現できます。ホームページ同士のつながり、TwitterやSNSなどでのユーザー同士のつながりもグラフで表現され解析されています。これまでにグラフ理論に関する数学的な問題を、いくつか解決してきました。
大学で得たもの
私が大学へ入学して得た最大のものは「自由な時間」と「先生」です。学問も遊びも本気で取り組むためには、何より時間が必要です。信頼できる先生のもとで、好きな数学に打ち込むことができたのは幸福な時間だったと思います。
放射光X線を使った電池電極反応 メカニズムの解明
放射光X線を使って電子を調べる

光素子作製装置
我々の身の回りにある物質は、それぞれ独自の性質を持っています。この性質を決めているのが電子です。電子のサイズは大変小さいのですが、放射光X線と呼ばれる非常に明るいX線を利用することで、その状態を調べることができます。
Liイオン電池正極材料の酸化還元軌道の解明
現在、私は高エネルギー放射光X線を使って、Liイオン電池を充放電した際に電極にもたらされる電子の所在(酸化還元軌道)の解明を行っています。Liイオン電池は我々の生活にとって身近な存在ですが、未だ多くの謎があります。その一つが酸化還元軌道の正体であり、これまで統一した見解が得られていませんでしたが、2015年に我々のグループがMn系正極材料における酸化還元軌道を明らかにしました。電極は電池の性能を決める重要な部分です。我々の研究がより高性能なLiイオン電池開発につながることを期待しています。
大学時代に得たこと
所属した研究室で、実験装置の制御プログラムの作成を行いました。一からプログラムの知識を学び、新たな実験システムを作りあげたことは大きな自信になりました。また、プログラム作成を通じて粘り強さと諦めの悪さを身に付けました。
不可視情報の「見える化」を実現する計測技術
計測技術の開発

電気インピーダンスCTによる体脂肪分布計測
医療診断では、体の内部の情報を体を傷つけることなく画像化する様々な計測技術が用いられています。例えばX線CT(計算機断層撮像法)はその代表的なものの一つです。これらの計測技術では、直接には見えない画像を、間接的に得られる観測データから画像再構成アルゴリズムを用いて計算することにより、見える化を実現しています。同様な計測技術は、医療診断の他、産業界における非破壊検査や環境問題における遠隔計測など様々な分野で必要とされ、目的や用途に応じた計測技術の開発が望まれています。
私たちの研究室では、このような計測技術として、健康管理で重要な体脂肪分布の情報を体表で観測した電気抵抗のデータから画像化する電気インピーダンスCT、ガンの診断を目的としガンマ線源の分布を画像再構成アルゴリズムによって画像化する小型ガンマカメラ、燃焼火炎の断面内の温度分布を非 接触で計測する赤外線CTなどを開発しています。
考えることを学んだ大学院時代
大学院生の頃は論文を書いて先生に読んで貰うと、最初から先生が書いた方が早いのではと思う程、真っ赤に添削されました。このような指導を通じて、研究に必要な筋道を立てて考えることを学ぶことができたと思います。
次世代の映像メディアテクノロジーを創出
コンピュータに適した新しいカメラの構成

高速液体レンズ

1msオートパンチルトシステム
情報技術の進歩に伴い、コンピュータがカメラの画像を理解する画像処理技術が急速に発展しています。しかし、これまでのカメラは人間が写真を撮ることを目的としているので、必ずしもコンピュータが画像を理解するのに適した形とは言えませんでした。
本研究室では、従来のカメラの構成を根本から見直して、コンピュータに適した新しいカメラの構成や、それを利用した画像処理技術とその応用を研究しています。例えば従来のカメラは、フォーカス調節が0.1秒程度でできれば人間にとって十分な速さと言えました。しかしコンピュータは人間より遥かに速く画像が処理できるので、これでは遅すぎます。そこで、0.002秒でフォーカス調節ができるレンズを開発して、それを組み込んだ新しいカメラを提案してきました。他にも、ラリー中の卓球の球を自動的に追いかけることができる、1msオートパンチルトと呼ぶ新しいカメラの機能を提案・実現しています。
様々な経験をした学生時代
大学では学問以外にも、体育会の部に所属したり、海外を旅行したりと、自分の興味に従って色々な場に身を置き、様々な体験をしました。自分を知ることができる唯一無二の貴重な時間だったと思います。
スピントロニクスをはかる

磁気トンネル接合を作製するスパッタ装置
従来のエレクトロニクスでは、半導体のpn接合を利用して、電子の電荷を電場で制御して電流を制御し、デバイスを動作させます。21世紀になって、電子のスピン(電子自身が磁石である性質)を磁場で制御して電流を制御し、デバイスを動作させる研究が進んでいます。これをスピントロニクスと呼んでいます。きっかけは1988年の巨大磁気抵抗効果(GMR効果)の発見(2007年ノーベル物理学賞)と1995年のトンネル磁気抵抗効果(TMR効果)の再発見です。まずハードディスクヘッドに応用され、ハードディスクの記録容量は20年間で100万倍になりました。
TMR効果は絶縁体と金属磁性体を数原子層で交互に積層した多層膜(磁気トンネル接合)で観測されます。最近、TMR効果は磁気トンネル接合界面の「化学結合の形」(波動関数の対称性)に依存して飛躍的に増大することがわかってきました。そこで、櫻井研究室では、高性能なスピントロニクスデバイスの実用化にむけて、磁気トンネル接合界面の化学結合の形をX線(コンプトン散乱)で調べる研究をしています。
コンピュータビジョンの研究

視覚誘導ロボット
私の研究室ではコンピュータビジョンを研究しています。コンピュータビジョンとは、人間が持つ視覚機能をコンピュータで実現することを目指した研究のことです。人間には目があり、これで周りの環境を見ることによって外界の情報を得ます。たとえば街を歩くときにも、どこが歩道か、そして障害物は無いか、などの情報は目で見て得ています。また、向こうからやって来るのは友達かどうか、今日は元気そうか、なども我々は目で見て判断しています。しかし、コンピュータにはこのようなことができません。もちろんカメラで画像を取り込むことはできますが、そこに何がどのように写っているかを解析することができないのです。研究室ではこれを可能にする研究を進めています。いま力を入れているのが視覚によるロボットの誘導です。画像処理技術を利用してカメラを目の代わりにし、人間のように視覚で自律的かつ自由に移動できるロボットの開発を進めています。これは難しいテーマですが、それだけにやりがいがあります。
より良い「光」社会の実現へ向けて、次世代光素子の研究開発

光素子作製装置
現代の私たちの生活には「光」を利用した技術が欠かせません。私たちの目は光の波長により色を認識し、テレビや携帯電話の画面を見ることができます。暗い夜でも照明機器からの光が私たちの日常生活を照らし続けています。インターネット網は、高速・大容量の光ファイバーが主流となっています。そして、最近では、再生可能エネルギーへの大きな期待から、太陽光発電の普及が加速しています。
以上のような背景のもと、現在は、以下の3つの研究テーマに取り組んでいます。
(1)酸化物発光素子の開発:私たちが光を利用するにはまず光を作り出す発光素子が必要ですが、それを構成する発光材料を開発しています。
(2)ポリマー光素子の開発:日本原子力研究開発機構との共同研究で、光ファイバー通信用ポリマー光スイッチの作製技術の開発を進めています。
(3)ZnO/Si系光電変換素子の開発:次世代太陽電池としての応用を目標に、酸化亜鉛(ZnO)とシリコン(Si)を組み合わせた光電変換素子を試作しています。