教員からのメッセージ

可視光に応答する金属錯体の「しくみ」を解明、新しい「しくみ」の分子をつくる

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かさ高い置換基により変形を抑えたCu(I)錯体の例
配位子の置換基のわずかな違いで、
錯体溶液の色が全く異なる(写真)

美しい色の金属錯体

 私達の目に色が見えるのは可視光という人の目が感じることのできる波長の光が届くからです。金属錯体は金属イオンと有機化合物の組み合わせからできており、美しい色を示す物質が数多くあります。太陽光を吸収し、そのエネルギーを別の色の発光に変えたり、電気・化学エネルギーに変換する役割を担うことができます。こうした光に応答し種々の機能を示す光機能性金属錯体は基礎と応用の両面で、現在盛んに研究が行われています。

光機能のしくみ

 私共の研究室では、新しい光機能につながる現象を分光学という手法を用いて解明し、それをもとに錯体を設計・合成しています。と同時に一般的な原理やしくみを、明らかにし、世の中に貢献したいと考えています。例えばI 価のCu 錯体は光吸収により、分子の中で+と―に部分的に電荷が分かれた状態になり、光を電気に変えるのに役立ちます。しかし、この時、CuイオンはII 価に近い状態になり、分子が形を変えようとし、機能低下が起こります。これをどうやって防ぐか、現象の解明と新しい配位子の設計が必要です。

大学時代に得たもの

 かけがえのない友人と尊敬する恩師、いろいろな出会いと巡り会い、それに尽きるのではないかと思います。

教授

浅野 素子

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Message

 「千里の道も一歩から」という言葉があります。本来の意味と少しずれるかもしれませんが、大変そうに思えることも、今日一歩進めておけば、明日その分楽になります。一歩踏み出した後は、案外、道は遠くなかったりします。

ケイ素クラスターへの挑戦

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ケイ素クラスターの例

化学の歴史

 化学の歴史は新しい物質の発見によって大きく進歩してきました。例えば20世紀前半に開発された高分子は現代の生活になくてはならない物質です。また20世紀後半に登場した遷移金属触媒やC60 はノーベル賞の対象になりました。

これからの研究

 私が研究しているケイ素化学についても同じことがいえます。ケイ素原子を1個含む化合物をモノシランといいます。その対極には 多数のケイ素原子から成るシリコン半導体があります。この二つの中間にある、ケイ素原子が数10 個~数100 個の化合物(ケイ素クラスター)はこれまで合成が困難だったため、ほとんど研究されてきませんでした。これは両者の中間的な性質をもつ化合物なのか、それとも全く異なる第三の物質なのか、研究を進めています。

入学後のお楽しみ

 私は大学、大学院時代に化学の研究には物質や現象に対する深い理解と直感が重要であることを理解しました。残念ながらこのようなことは受験勉強で経験することができません。大学での化学の研究を楽しみにしていてください。

教授

久新 荘一郎

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Message

化学の勉強は既に解明されていることを理解し、覚えることですが、化学の研究では未知の物質や現象を調べ、解明していく能力が必要です。そのため、同じ化学でも勉強と研究では要求される能力が異なります。

資源の有効利用と環境保全のための新規な無機材料の開発

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新規な可視光応答型光触媒材料

様々な場面で利用されている触媒

 化学反応の活性化エネルギーを低下させ、反応がより速く進行するようにする物質を触媒といいます。適当な触媒を用いると比較的低温でも反応が速やかに進み、目的生成物の合成や有害物質の除去を効率よく行うことができます。触媒は、ガソリンをはじめとする液体燃料、プラスチック、化学繊維等の石油製品の製造プロセスや自動車の排ガス浄化など様々な場で利用されており、現代社会を支える重要な技術のひとつです。触媒の高性能化を図るには触媒材料がどのような構造や特性を持ち、どのような因子が触媒活性と関連しているかを調べることが重要です。我々の研究室では、環境保全、エネルギーと資源の有効利用に寄与することを念頭に置き、新しい固体触媒材料の開発に関する研究を行っています。

未来につながる研究

 高校や大学で進路を決めるとき、将来は「エネルギーと環境に関係する分野」に進みたいと思い、現在に至っています。エネルギー問題も環境問題も複雑で解決策を見出すのは簡単ではありませんが、現在、行っている研究が何らかの貢献につながることを目指して研究に取り組んでいます。

准教授

岩本 伸司

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Message

化学は物質について原子・分子レベルで考える分野です。新規化合物の開発や様々な現象の解明は簡単ではありませんが、「化学は、社会に貢献する重要な分野であり、そしてなにより“おもしろい”」と思います。

人の役に立つ機能性ペプチド・タンパク質を創製する

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アルツハイマー病アミロイドβの
会合体の電子顕微鏡写真

研究背景

 ペプチド・タンパク質は、私たちの体の中で、多様な働き(血糖値の調節、病原菌の捕捉など)をしています。一方、機能が破綻してしまうと、様々な病気の発症を引き起こします。高齢化社会における問題として、認知症患者の増加がありますが、認知症の約半数を占めるといわれているのがアルツハイマー病です。アルツハイマー病は、アミロイドβペプチドやタウタンパク質の異常が引き金となって発症すると考えられています。

研究内容

 アミロイドβペプチドは、可溶性オリゴマーと呼ばれる会合体(図) を形成し、この会合体が神経細胞死を誘導すると推定されていま す。私たちのグループでは、アミロイドβが形成する可溶性オリゴ マーに作用する人工ペプチドやタンパク質を創製し、アミロイドβに よる神経細胞死を抑制できるかどうか、細胞実験などにより調べ ています。また、がん関連タンパク質を標的とした機能性ペプチド の創製も試みています。

大学時代

 卒業研究では、目的の化合物がなかなか合成できずに苦労しました。しかし、苦労してようやく合成できたときの感動は、今も心に強く残っています。

准教授

高橋 剛

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Message

若いうちは特に、自分自身に限界をつくらずに、何事にも必死に取り組むことが大切だと思います。すぐに成果は出ない場合が多いと思いますが、必死で取り組んだ経験は、いつか必ず役立つときがきます。

新しい結合を創製する

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この一行の化学式の陰に累々たる試行錯誤が…

未知の結合

 まだ見つかってない結合があると聞いたら、驚きますか?高校の化学でアセチレンのような炭素―炭素三重結合をもつ化合物を習うはずです。しかし、2つの炭素を両方ともケイ素に置き換えた化合物や、遷移金属とケイ素に置き換えた金属―ケイ素三重結合をもつ化合物が合成されたのは、ごく最近のことです。実は、まだ見つかってない結合が多数あるのです。

新しい遷移金属―典型元素結合を創る

 私たちは、遷移金属と典型元素との間に新しい結合をもつ、錯体と呼ばれる化合物を合成し、その性質を解明する研究をしています。未知の結合、新しい化合物がターゲ ットですから、その合成方法は誰も知りません。「こんな結合を創ろう」という目標を決めたら、あれこれ戦略を練り、実際に実験しては失敗し、また考える、の連続です。その中で、一歩一歩ゴールに近づくことができる時もあれば、予想外の化合物ができてびっくり、なんて時もあります。毎日が驚きの連続です。

諦めたら終わり

 諦めず、自分で考えて試行錯誤を繰返していると、道(未知)が開けてくるものです。

教授

上野 圭司

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Message

 大学時代に得た知識はあっという間に古くなってしまいますが、真剣に考えに考え抜いたことや、自分で工夫して非常に苦労して解決した経験は、ずっとあとまで役に立ちます。毎日、真剣勝負!

新たな有機 π 電子系化合物の創製

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溶媒によって発光の色が異なる有機化合物

π(パイ)電子

 私たちの身の回りには、繊維、プラスチック、医薬品、液晶材料、半導体など、有機化合物からできたものが多数ありますが、有機化合物の性質や機能の発現において重要な役割を果たしているのは「π(パイ)電子」と呼ばれる電子です。π電子の挙動を解明し、制御することにより、発色性、発光性、電導性、磁性、センサーなど様々な機能を持つ有機化合物の創製が可能となります。

生活に役立つ物質の開発

 我々の研究室では、特に「ヘテロ環」という骨格をもった新たな構造の有機π電子系化合物を合成し、その構造と発光特性などの性質の関係を明らかにするといった、どちらかと言うと基礎的な研究を行っています。このような研究の積み重ねが、将来我々の生活で役に立つ物質の開発につながります。未知の有機π電子系化合物はたくさんあり、無限の可能性を秘めていると言えます。
 有機化学の魅力は、今までに存在しない化合物をデザインして、いろいろな化学反応を駆使することにより、それを実際に自分で合成できる点です。実際の合成ではいろいろな困難を伴いますが、苦労して目的物ができた時の喜びは何とも言えませんし、また苦労して得た経験は必ず自分自身の貴重な財産となります。

教授

中村 洋介

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Message

 いろいろな事象を単に丸暗記するのではなく、なぜそうなるのかを考える習慣をつけることが重要です。また、若い時は、視野を広くして、いろいろなことに 興味を持ち、幅広く学修して欲しいと思います。

光化学反応により有機超伝導体・半導体・強発光体を創製する

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世界初の有機超伝導物質であるピセンは
光化学反応で作られた(Nature, 464(2010)76)

励起状態の分子

 高校生の皆さんが学校で学ぶ化学では、未来永劫安定に存在する物質を扱っていると思います。このような物質はエネルギー的に最も安定な状態(基底状態といいます)にあります。基底状態の分子に光のエネルギーを与えて、エネルギーの高い状態(励起状態といいます)にしたときに、どのような化学反応がどの程度で起こるのかを私は研究しています。励起状態の分子は不安定なので、獲得したエネルギーを化学反応の推進に使用したり、光として放出して安定な状態に遷移しよう とします。基底状態では起こらない反応も励起状態では簡単に起こることもあります。最近、励起状態の反応を使って、世界初となる有機超伝導物質の作成に成功しました。なんと,紫外線を当てるだけでこの物質ができるのです。さらにこの物質は有機トランジスタにもなることがわかりました。

大学で学んだこと

 光化学の研究を始めたのは、学部の4 年生からです。それまでは物理を専攻していました。努力して学んだ物理学はその後の光化学の研究生活に大いに役立ちました。ちなみに化学の勉強は多くの先生や友人に教わりながら独学で行いました。人間、必要に迫られて勉強すると、何とかなるものだと実感しています。

准教授

山路 稔

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Message

 何事も基礎が大切です。大学に入学するまでに、基礎の学力をしっかり身につけておいて下さい。将来、必ず役に立つことでしょう。努力は必ずしも報われませんが、地道な努力無しで成功はありえません。

分子を集合させて新たな材料を創る

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結び目を作っても壊れません。
(90%以上水を含んだゲル)

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水の中に入れるとドンドン膨らみます。
(左:膨潤前、右:膨潤後)
©2013 Springer

分子集合は新たな機能を生む

 様々な物質は原子や分子からでき ています。同じ構造式を持つ物質でも分子の集まり方によって物質の性質は異なります。温度変化、pH変化、電気刺激などによって分子は自ら集合し、時には新たな機能を発現します。

未来を拓くソフトマテリアル材料

 ソフトマテリアル材料(例えば、ゼリーのような水を豊富に含んだゲル等)は工業的にも様々な分野に利用されていますが、力を加えると壊れやすいという欠点を持っています。そこで、ナノ微粒子という非常に小さな粒子をゲル内に組み込ませることによって、伸縮に強く壊れにくいゲルを開発しています。このような材料が将来、人工筋肉のような医療材料などの用途に利用され得ることを期待しています。

大学時代に学んだこと

 大学時代、 研究室の先輩から「一を聴いて十を識れ」と言われて鍛えられました。当初は「無茶苦茶なことを言うな」と思いましたが、日々研究を重ねる中で一つの自然現象が様々な要因と繋がっていることを実感し、その言葉の深みを身をもって知りました。今でもその考え方が私の研究の糧となっています。

准教授

武野 宏之

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 物事を成し遂げる必要条件として「運鈍根」という言葉があります。人生をスマートに生きようとせず、愚直でも根気よく何事にも取り組んで欲しいと思います。大学はそれを実践するのに適した場所です。

ミクロの世界を探る”光る分子”の開発

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イリジウム錯体の発光

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マウスの腫瘍からの発光

「ミクロの決死圏」という映画がありました。潜水艦に乗った人間が血管よりも小さくなって、血流とともに体の中を旅しながら人体の不思議を伝えてくれるというものでした。もし、人間の代わりに分子がレポーターになってくれたらどうでしょう。1個の分子の大きさは細胞よりもずっと小さいので、人体の中のどんなところへも入っていくことができそうです。こんな夢を与えてくれる分子として、“蛍光プローブ”と呼ばれる分子があります。これに光をあてると、その分子に特有の色の光を発します。この光を目印として利用すれば、細胞の内部のように本来は目に見えない世界の変化を見ることができます。つまり、蛍光プローブとは、蛍光を利用してミクロの世界を探索する機能をもつ分子です。私たちの研究室では、有機合成の技術を使って生体内で働く様々な蛍光プローブを開発しています。最近開発したイリジウム錯体と呼ばれるプローブを生体に投与すると、がん腫瘍の部分だけを光らせることができます。この方法は放射性物質を使わない新しいがん診断法として注目されています。

教授

飛田 成史

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私たちは、光を化学や生物、さらに医学などに応用する道を切り拓くことを目指して研究に励んでいます。工学の魅力のひとつは、このように思いがけない分野まで応用できるところにあります。

光化学で結晶を作る

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光照射装置:タンパク質が結晶化する

私はタンパク質が光化学反応をおこして結晶になることを発見しました。その仕組みを明らかにし、タンパク質結晶の一般的な作成法として実用化を意識した研究を進めています。タンパク質の結晶を作り、結晶のX 線回折を測定するとタンパク質分子の立体構造を明らかにすることができます。立体構造を元に、疾病の原因となるタンパクに作用する薬を設計することができます。
タンパク質の光化学反応のことはまだ詳しくわかっていません。また、タンパク質の結晶成長の研究も最近始まった新しい分野です。私たちはこの重なった領域を勉強し、理詰めで明らかにしながら研究を進めています。実験には決まった方法がまだ無いので試行錯誤しながら、必要であれば自分たちで実験装置も作りながら研究しています。
今では、この研究は国のプロジェクトとして予算をいただき、世界にさきがけた研究として進められています。

教授

奥津 哲夫

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科学の考え方を身につけ、技術を幅広く学んで欲しいと思います。大学では教わることだけでなく、自ら学ぶことができるようになってください。そして、問題の認識と解決することを経験してください。

物理化学で生命現象を解明する!

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レーザーを用いた膜タンパク質機能中間体の解析

近年の生命科学は、生物学のみならず化学、物理学、情報科学など多様な学術分野が融合した新しい研究分野として発展しています。生物の設計図であるゲノムが次々と読み解かれていく中、生体中で様々な働きを担うナノマシンであるタンパク質の機能や構造が、研究の主要な対象になっています。特に、エネルギー生産や情報伝達など重要な機能を担う膜タンパク質の研究は、生命現象の解明に加えて、創薬研究のためにも、ますますその重要性を増しています。
私たちは、分子のレベルで、膜タンパク質の形や働きを理解し、生命現象を解明することを目指し、「光」を用いた計測手法を主体とした物理化学と呼ばれる分野の考え方や方法を用いて研究を進めています。
実は、膜タンパク質は重要な研究対象であるにもかかわらず、複雑な複合体であり、また実験上の取り扱いが困難なことが多いため、未解決の問題がまだまだたくさんあります。膜タンパク質の研究を発展させるための基盤となる新しい分子や方法を開発し、創薬の研究につなげることが私たちの目標です。

教授

園山 正史

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何ごとも基礎が重要です。基礎科学をしっかりと学んだ上で、夢の実現に向かって頑張りましょう。失敗を恐れず、辛抱強くものごとに取り組む若い人と一緒に研究を行えることが、私の一番の楽しみです。

生物の情報処理に学ぶ信号情報処理デバイス開発

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神経シナプスを模倣した高分子デバイス素子

近年のIT 技術の進歩は目覚ましく、2025 年には人類の使う消費電力の約20%を情報処理が占めると予測されています。一方、従来型のコンピュータとは異なり、生物はその中枢神経系や感覚神経系において、超低消費電力の情報処理を実現しています。この生物の驚くべき情報処理を可能にしているのは、環境に存在するノイズを積極的に利用するその情報処理機構にヒントが隠されています。この生体型情報処理システムを人工的に作ることができたら、将来的に情報処理による消費電力が大幅に低減できると期待しています。
当研究室では、高分子材料科学の立場から、高分子の分子運動を積極的に利用した新規の有機エレクトロニクスデバイス素子を作製しています。そのために、従来の価値観では有用性が低いとされてきた、室温付近に融点が存在するバイオベースポリマーやパイ共役系高分子半導体に着目して研究を進めています。さらに、高分子の分子運動の実験的評価法の開発も行っています。

准教授

浅川 直紀

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当研究室はこれまで化学分野としてほとんど認識されてこなかった研究分野を開拓しています。自由な発想と、他者とのコミュニケーション能力を養い、黎明期にある学問を共に育てていきましょう。