ご挨拶

大学院理工学府 環境創生部門 教授
元素科学国際教育研究センター長
 尾崎 純一
1.元素科学国際教育研究センターの設立の経緯
 2015 年4 月1 日に、理工学部附属元素科学国際教育研究センターが桐生キャンパスに設置されましたので、ここでセンターのご紹介をさせていただきます。このセンターは、群馬大学理工学部が長年培ってきたカーボン材料研究とケイ素化学研究を2 本の柱とし、その基礎化学から応用開発までの広い範囲をカバーした材料・物質研究活動を行います。さらに、これを通して次世代を切り拓いていく材料分野の研究者・技術者を輩出していくことを目的としています。
 以下に、カーボン材料研究とケイ素化学研究の半世紀以上にわたる歴史について振り返ってみたいと思います。
 理工学部おけるカーボン材料研究は、1953 年に本学名誉教授 大谷杉郎先生により開始され、3 世代にわたり炭素化メカニズムの解明、ピッチ系カーボンファイバーの発明、触媒黒鉛化現象の理解、ナノカーボン材料の新規合成法の提案、そしてエネルギーデバイス用高機能カーボンアロイ材料の研究へと発展してきました。2008 年には教員だけでなく企業研究者も参加する「カーボン材料創成研究会」も設立されました。これが、元素科学国際教育研究センターの母体の一つです。その後、本学は2011 年には文科省より低炭素研究ネットワーク事業(LCnet)のサテライト拠点である「アドバンストカーボン構造・機能相関研究拠点」として選定されました。またこの年、カーボンとケイ素を基軸とする新規学術分野の創成を目的とする、文科省特別経費事業「エレメント・イノベーション」が採択され、現在プロジェクトを推進しているところです。
 一方ケイ素化学研究は、1960 年代に本学名誉教授 右田俊彦先生と元教授 永井洋一郎先生により開始され、やはり3世代に亘ってかご状あるいは梯子状シロキサン化合物やシリコーンなどの特異な構造を持つ分子の合成法の確立から、液晶性、発光性、光化学活性を有するユニークなケイ素化合物の開発などについて、研究が展開されてきました。また、2005 〜 7 年にかけては、ケイ素化学研究グループが中心となり、文科省特別教育研究経費・連携融合事業による「ケイ素を基軸とする機能性材料の開拓」を実施し、その成果として2007 年には「ケイ素科学国際教育研究センター」を設置しました。これが今回の元素科学教育研究センターのもうひとつの母体です。

2.本センターの目標
 本センターではカーボン材料研究とケイ素化学研究を中心に据え、基礎科学の解明から応用技術の開発に至る材料・物質研究活動を行います。さらに、これらの研究活動を通して得た知見を体系化し、新しい世界を創造していく材料分野の研究者・技術者を育てていきます。
 本センターにおける学術的な展開は、本学が実施してきたプロジェクト「エレメント・イノベーション」で培われた研究成果・知見を基礎に繰り広げられます。「エレメント・イノベーション」プロジェクトでは、次の4分野の研究が進められてきました。@エネルギー・環境分野、A医療分野、B情報・通信分野、C材料分野。また、プロジェクトには化学、化学工学はもとより、電気・電子工学、機械工学の研究者が参画し、分野の垣根を越えた討論をすることで、成果を上げてきました。これらの知見は本センターでの研究・教育に継承・発展されます。

3.本センターの組織と構成員
 本センター発足に当たり、筆者がセンター長に、久新荘一郎教授が副センター長に任命されました。また、専任教員は3 名で、私の他に、エムディ・ザキール・ホサイン准教授と石井孝文助教が配置されています。
 本センターは、(1) ケイ素科学教育研究部門、 (2) カーボン材料教育研究部門、(3) 元素・表面科学教育研究部門、(4) ケイ素材料科学教育研究部門(連携部門)、 (5) ケイ素科学展開教育研究部門(流動部門)の5 部門からなります。上記3 名の専任教員はカーボン材料教育研究部門に所属します。他の4 部門は、理工学府および外部の教員が担当します。
 筆者は有機物からカーボン材料を作る炭素化過程の研究と、その成果を利用しての機能性カーボン材料の創製を目指した研究を行っています。特に触媒活性を有するカーボン材料に興味を持ち、現在は固体高分子型燃料電池用カーボンアロイ触媒の開発を中心に研究を進めています。
 ホサイン准教授はカーボン系物質の一つであるグラフェンを中心としたナノ材料化学の研究を行っております。ちなみにグラフェンは2010 年にノーベル物理学賞が与えられた物質です。
 石井孝文助教は、カーボン材料の詳細な表面及び構造解析技術の開発を基軸に、表面機能を有するナノカーボン材料の創製を目指した研究を行っています。

4.今後の展開
 群馬大学の材料・物質科学の知識を集積し、カーボンとケイ素という限られた元素ではありますが、エッジの立った研究を行う研究拠点としての知名度を上げていきたいと考えています。
 そのためには、若手研究者が雑用に煩わされることなく研究と教育に専念できるような環境づくりと資金投入が不可欠です。研究の環境と成果は、あたかも鶏と卵の関係のようなものです。実績がなければ環境を作るだけの資金を得ることはできない、しかしながら、環境がある程度整っていないと、よい研究をすることはできない、このような関係にあります。また、よい教育はよい研究が行われてはじめて可能になります。折角設立した研究センターですので、上述の目的を完遂させるためにも、私たちも全力を挙げて活動に邁進したいと考えておりますので、教職員をはじめ、関係各位の暖かいご支援をお願いする次第です。

図1 元素科学国際教育研究センターの設立経緯

半世紀にわたるカーボン材料とケイ素化学の研究を源とするカーボン材料創成研究会とケイ素化学国際教育研究センターの協力によりエレメント・イノベーションプロジェクトが発足。その成果を引き継ぎさらに発展させるため、元素科学国際教育研究センターが、2015年4 月に発足。

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