21世紀のロウソクの科学

(a) 炎の写真

(b) 炎の温度分布

 ロウソクの科学(マイケル・ファラデー著、三石巌訳、角川書店(1962))を読んだことがあるでしょうか。英国の科学者、ファラデーが1861年のクリスマス休暇に市民向けに行ったロウソクの燃焼に関する連続講演会を本にまとめたものです。私たちも最近になって、小中学校の理科実験でおなじみのブンゼンバーナーの炎を対象に、X線コンプトン散乱を使って燃焼の様子を調べる手法の開発に成功しました。なお、ロウソクの炎は拡散火炎、ブンゼンバーナーの炎は予混合層流火炎と呼ばれています。
 図(a)は炎の写真、図(b)はX線コンプトン散乱で求めた炎の中心軸を含む断面の温度分布です。炎の内部は室温ですが、白く輝く炎の境界で急に温度が上昇し、その外側の薄青で輝く領域とさらに外側の暗い領域で1500Kに達する高温の領域があることがわかります。本方法は非接触であるため、従来の熱電対の測定よりも精密な温度分布測定ができました。さらに、火炎の各部分におけるコンプトン散乱X線スペクトルを解析した結果、燃焼反応は火炎境界の発光部分で劇的に進行し、境界外部の高温部分にOH ラジカル や水素原子が多く存在することが新たにわかりました。本手法は、高い物質透過能を有する高エネルギーX線を用いた分析手法であるため、エンジンなどの内燃機関の温度分布、化学反応を非接触で測定することが可能です。本計測技術を適用することで高効率を目指した革新的エンジン技術の進展に資することが期待されます。燃え上がる科学の灯火となるでしょうか。


  • Hiroshi Sakurai, Nobuyuki Kawahara, Masayoshi Itou, Eiji Tomita, Kosuke
    Suzuki and Yoshiharu Sakurai, J. Synchrotron Rad. (2016). 23, 617-621
  • 2016年2月26日読売新聞群馬版「エンジン温度正確に測定-群大X線をつかった手法開発」
  • 2016年2月19日「X線を用いた燃焼現象の新しい非接触測定手法の開発に成功」, プレス発表(群馬大学・岡山大学・高輝度光科学研究センター)

電子情報理工学科

教授 櫻井 浩、  助教 鈴木 宏輔