X線で磁石の起源を探求する

KEK-PFにおける磁気回折実験装置の概略

 X線は、病院でのレントゲン写真やCT撮影に用いられており、比較的なじみのある放射線と言えるでしょう。体の内部の内臓や骨を見ることができます。筆者は、このX線により磁石の内部の原子を調べています。どの原子が磁石の源であるか、専門的に言うと、どの原子がスピンを持って磁性原子となっているか、を調べており、これを磁気構造研究と言います。
 この研究で用いられるのは放射光という特殊なX線です。その特徴は、電子加速器により作られ、医療用X線に比べ桁違いに強力であり、明瞭な偏光特性※を持つ、ことです。特に、円偏光を利用できることが最大の特徴と言っても過言ではなく、これにより磁性原子のみを選択的に観測できるのです。(※電磁波の電場あるいは磁場の振動方向が直線状であるときは直線偏光、波の進行に伴い振動方向がらせん状に右(あるいは左)回りに回転するときは右(あるいは左)回り円偏光、と言います。)
 現時点で、日本には九つの放射光施設がありますが、筆者は、群馬県近くに立地する高エネルギー加速器研究機構(KEK)の放射光施設(フォトンファクトリーPF)を利用しています。図に筆者のグループがKEK-PFに整備した実験装置の概略を示します。円偏光放射光を試料に入射し、磁場反転に伴う試料からの回折強度のわずかな変化(磁気回折強度)を観測すると、磁性原子が浮き彫りになって見えてきます。この実験手法を次世代磁気デバイス記録媒体の開発へ役立てることが今後の目標です。


  • Photon Factory Activity Report 2015 #33 (2016) B 200-201.
  • Key Engineering Materials, Vol. 698 (2016) 3-7.

電子情報理工学科

教授 伊藤 正久