生命=分子機械の謎を解き明かす

脂質分子が水中で自発的作る袋の顕微鏡写真

 人間を含め生き物も全て,究極的にはタンパク質,核酸,脂質,糖といった分子,つまり物質からできています。これらの分子の集合体である生命は,人間が作った機械と同じく,エネルギーを使い,動き,そして,物を作りだします。生物は一種の機械で,分子機械とも呼ばれます。ただ生物は,普通の機械よりも遥かに複雑で,柔らかい機械です。そして,もの凄く高性能です。この生命=分子機械のメカニズムを解き明かすことを,究極の目標にして研究しています。
 この目標への迫り方ですが,通常の機械のメカニズムを理解するのと同じ方法を取っています。つまり,機械の部品である歯車(個々の生体分子)が,互いにどのように噛み合っているかを調べるのです。具体的には,生体膜を構成している脂質分子に着目して現在研究を進めています。
 生物は,細胞を基本単位に出来上がっています。この細胞は一種の柔らかい袋であり,この袋は生体膜と呼ばれる膜からなります。生体膜は主にタンパク質と脂質からなりますが,膜の性質・性能を決めているのは脂質です。多くの脂質は,水に入れると,図に示したように自発的に袋をつくります。脂質という歯車は,水という歯車とどう噛み合っているのか(ちょっと難しい言葉で言えば,どう相互作用しているのか),袋のなかで脂質同士の歯車はどう噛み合っているか,といったことを,X線回折等の手法を使って分子レベルで,調べています。