群馬大学理工学部

有機溶剤を用いずにリチウムイオン電池用セパレーター膜を製造する技術を開発 ~重点支援「Sメンブレン」プロジェクトの成果が高分子学会パブリシティー賞を受賞~(プレスリリース)

 

 

 

 

 本学「研究・産学連携推進機構」では、今後の本学における学術研究を推進するため、本学の強み・特色として高い可能性を有するプロジェクトを「重点支援プロジェクト」として支援しており、これを受けて、「超」高性能あるいは「超」高機能を有する膜(メンブレン)を創製する「スーパー・メンブレン」プロジェクト(略称:*1「Sメンブレン」プロジェクト)が平成29年度に発足しました(代表:山延健教授)。
 今回、この重点支援「Sメンブレン」プロジェクトの一環として、上原宏樹教授らの研究グループは、有機溶剤を一切用いることなく、ナノレベルの細孔が連通したリチウムイオン電池用セパレーター膜を産業レベルで製造する実用化技術を開発しました。
 この成果は、今月23日(水)から25日(金)に名古屋国際会議場で開催される第67回高分子年次大会で発表されますが、それに先立ち、「学術、技術、又は産業の発展に寄与するものであり対外的に発表するにふさわしいと認められた」パブリシティー賞(発表数約1,000件中の11件)*2を高分子学会から授与されました。

大面積多孔質薄膜の電子顕微鏡像

◆背景・経緯◆
 超高分子量ポリエチレン[1]はその優れた機械強度および化学的安定性から、リチウムイオン電池セパレーター膜[2]として実用化されていますが、分子鎖絡み合いを多く含むため、その製膜には多量の有機溶剤の含浸が不可欠です。これらの有機溶剤には、発がん性のものも多く含まれ、その除去コストが新興国との価格競争面で大きな問題となっています。また、この有機溶剤が除去された部分が開孔部となるため、原理的にナノメートル(nm)サイズの細孔を形成させるのが難しいという問題点も有しています。
 一方、上原教授が開発した溶融延伸技術[3]は、分子鎖絡み合いを応力の伝達点として利用する点に特徴があり、有機溶剤処理を一切必要としません。この延伸法により、高強度釣り糸等の高性能繊維が開発・実用化され、この成果は平成29年度繊維学会賞*3を受賞しています。また、上原教授は、高分子材料特有の結晶/非晶の相構造を制御することで[4]、nmサイズの細孔が連通したナノポーラス膜を製造する技術も開発し、平成29年度高分子学会三菱化学賞(現三菱ケミカル賞)*4を受賞しています。
 今回、これらの技術を融合するとともに、産業レベルでの実用化を目指して、高倍率延伸が可能な大型装置を開発し、縦横1m×1mの大面積で、かつ、膜厚2μmの極薄膜を製膜することに成功しました。これにより、nmサイズの連通細孔を有するリチウムイオン電池セパレーター膜を有機溶剤を一切用いることなく製造することが可能になり、これら膜厚の極薄肉化および細孔サイズの極微小化による高付加価値化も期待されています。
 なお、本成果は、5月23日(水)13:00から名古屋国際会議場で開催される第67回高分子年次大会にて、上原研究室所属の大学院生・東宮大貴君により発表されます。

◆今後の方向性◆
 今後、この大面積薄膜およびナノポーラス膜を基材として、さらに他材料あるいは技術と複合化することにより、リチウム電池セパレーター膜用途以外に展開するための発展研究を重点支援「Sメンブレン」プロジェクト内で推進して参ります。
 また、平成28年度に本学・機構B棟(旧インキュベーション施設)内に設立した「プラスチック延伸技術支援センター」にて、本技術の実用化を目指した産学連携ならびに技術移転と、それらを通じた人材育成を推進していく予定です。

◆用語解説◆
[1] 超高分子量ポリエチレン:
 分子量が100万(106)g/mol以上のポリエチレンであり、各種ポリマーの中で最も単純な分子骨格(-CH2-のみ)で構成されるにも関わらず、防弾チョッキや人工関節等の高強度部材の原料に用いられるエンジニアリング・プラスチックの1種。
[2] リチウムイオン電池セパレーター膜:
 陽極と陰極を隔て、Liイオンならびに電子が通過できる連通細孔を有する膜。細孔サイズがμmサイズであると、滞留Liイオンが結晶化して発火ショートの原因となる。自動車搭載に向けた高出力化のために、セパレーター膜の薄肉化による電極層の高集積化が求められている。
[3] 溶融延伸技術:
 高分子鎖の絡み合いを応力の伝達点として利用して、溶融状態からの延伸によって高強度繊維および膜を製造する独自技術。溶融粘度が高い超高分子量樹脂に適し、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂でも高性能化・高機能化に成功。
[4] 結晶/非晶の相構造制御:
 各種の形状に加工された高分子材料は、結晶成分のみならず、非晶成分も含んでいる。これらの相構造を、独自の製膜技術・延伸技術によって規則配列化させると、単一骨格のポリエチレンであっても、ブロック共重合体と同様なnmレベルの相分離構造を発現させることができる。

◆関連webサイト◆
*1「Sメンブレン」プロジェクト
   http://www.chem-bio.st.gunma-u.ac.jp/~smpgu/
*2 高分子学会プレスリリース
   http://main.spsj.or.jp/koho/koho_top.php
*3 繊維学会「学会賞」
   http://www.fiber.or.jp/jpn/awards/prizeF.html
*4 高分子学会「三菱ケミカル賞」
   http://main.spsj.or.jp/c15/mitsu/mitsuran.php

◆報道問合せ先◆
(技術開発に関すること)
 群馬大学 大学院理工学府分子科学部門(理工学部化学・生物化学科)上原宏樹 教授
 〒376-8515 群馬県桐生市天神町1-5-1(桐生キャンパス)
 hirokiuehara[at]gunma-u.ac.jp(メール送信時は、[at]を@に変更して下さい)
 研究室webサイト http://polymer.chem-bio.st.gunma-u.ac.jp/uehara/index.html

(共同研究に関すること)
 群馬大学 研究推進部 産学連携推進課 理工学系産学連携係
 〒376-8515 群馬県桐生市天神町1-5-1(桐生キャンパス)
 TEL:0277-30-1101・1102・1198  FAX:0277-30-1197
 kk-sangakurenkei3[at]jimu.gunma-u.ac.jp(メール送信時は、[at]を@に変更して下さい)
 産学連携webサイト http://research.opric.gunma-u.ac.jp/industry/i_002/